グリーンランド 北極圏の島で見た地球温暖化

文=ERIKO

こんにちは。定住旅行家のERIKOです。
私は様々な国の家庭に滞在して、生活をともにするという旅をしています。
今までに訪れた国は50カ国以上、滞在した家庭は100以上になります。
本コラムでは、SDGs(持続可能な開発目標)をテーマに、旅で見つけた“環境問題の今”をお届けします。
 
第2回はグリーンランド。北極圏に位置し、氷河におおわれた島での生活。アザラシ猟に同行したときに目の当たりにしたのは、忍び寄る地球温暖化の影響でした。

【プロフィール】
ERIKO(エリコ)
モデル・定住旅行家。鳥取県米子市生まれ。国内外のさまざまな地域で現地の人びとの家庭に入り、生活をともにし、その暮らしや生き方を伝えている。
訪れる国では積極的に民間外交なども行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。およそ50カ国にて106家族との暮らしを体験。
とっとりふるさと大使。米子市観光大使。



- 目次 -


・太古の姿をとどめる極北の島へ

・世界遺産の氷河に隣接する街

・その日の獲物が食卓へ 日常の中の狩猟

・アザラシ猟に同行 氷河崩壊を目の当たりに

太古の姿をとどめる極北の島へ

「温暖化による気候変動」という言葉を聞いた時、皆さんが具体的に身の回りで思い浮かぶことはあるでしょうか。テレビのニュース、雑誌や本で取り上げられているなと思ったことがあるという方も多いと思います。

一方、実際の生活の中で、これは温暖化の影響だ!と感じられることに直面する機会はまだまだ少なく、多くの人にとって、この言葉はどこか遠くで起きていることというイメージ以上のものではないかもしれません。

現在、地球上で温暖化の影響が大きく現れているのは、北極や南極などの極地と呼ばれる場所だといわれています。

2021年の秋、私は「定住旅行」を北極圏に位置するグリーンランドで行いました。

グリーンランドの大自然

皆さんはグリーンランドを地図上で見たことはあるでしょうか。地図で確認すると、国土は真っ白に塗りつぶされており、他の国とは違った印象を受けます。

 

私も事前調査をするまでは、この土地に人が住んでいるというイメージもなかったほど、距離的にも精神的にも遠い存在でした。

グリーンランドは1979年までデンマークの植民地であり、現在はデンマーク領に属しています。面積は日本の約6倍。世界一大きな島です。

 

北ヨーロッパの人たちにとっては、人気の観光地です。人口は5万6000人と少数ながらも、イヌイットの末裔たちが伝統的な生活を送っています。

飛行機の窓から見えたグリーンランドの大地

本格的な冬が始まる前の10月、滞在先となる西部イルリサットへ向かいました。
 
飛行機の窓から眼下に広がる海の深いブルーと氷の白さの力強さに、思わず心が締め付けられるような高揚感を覚えました。
グリーンランドの土地はおよそ80%が氷床と万年雪で覆われています。地図の白さはそれを表していたのだと、この大地を見て実感しました。

晴天の日の夜には必ず見えるオーロラ

世界遺産の氷河に隣接する街
 
イルリサットは、人口5,600人が暮らすグリーンランドで3番目に大きな街。世界遺産の「イルリサット・アイスフィヨルド」があり、多くの観光客が訪れる場所でもあります。
 
イルリサットとはグリーンランド語で「大きな氷河」という意味を持ち、その名の通り、何十階建のビルの高さもあるような氷河で埋め尽くされています。

イルリサットの港 街と街を繋ぐ道路がないため船が主要な交通手段となる

この街で滞在させてもらったのは、ダービセンさんという50代なかばのご夫婦の家でした。お母さんのリザベスさんは小学校で教師を、お父さんのジョンさんは観光業に従事しています。グリーンランド人の主な就業先は、漁業、行政サービス、観光業などです。

イルリサットで滞在したダービセン家

彼らの家はグリーンランドの典型的な作りで、岩の上に建てられています。グリーランドの大地は永久凍土のため、地面に直接建てられないからです。
 
家屋の素材には木材が使用されているのですが、近年温暖化の影響で雨が降るようになり、耐水性のない建物に傷みが生じています。
 
リザベスさんやジョンさんが子どもの頃は、雨など見たことがなかったそうです。2021年に南東部の標高3,000m地点で観測史上初の雨が観測されたと発表されました。
 
たかが雨と思うかもしれません。しかし、これまで降雨がなかった地域では、街に水路のインフラがなかったり、慣れない湿気に体調を崩したりと、さまざまな弊害が生じています。
 
また数年前から、夏場の気温上昇に伴い、多くの家庭にエアコンが取付けられました。もともと日差しを多く取り入れるために設置されていた窓が、皮肉にも室内の温度を高めてしまう原因となっているのです。


その日の獲物が食卓へ 日常の中の狩猟

グリーンランド人の生活に欠かせない猟にも、温暖化の陰が忍び寄っていました。

グリーンランド人の先祖であるイヌイットの人たちは、およそ800年前にこの地へやってきてから、海や陸の動物を食糧としてきました。

狩猟をメインとする暮らしは、スーパなどができた現在でも変わっていません。クジラ、カリブー、タラ、樺太ししゃも、アザラシなど、毎日の食卓に並ぶのは彼らが自ら狩猟した食材です。

アザラシ肉の煮込み料理

グリーンランド人がよく食べるクジラ肉

男の子は10歳くらいになると、親から狩猟を学ぶのが一般的です。
学校ではハンティング休暇という休みも設けられているほど、この地で生きていくために重要なスキルでもあります。
 
アザラシの肉は、栄養素が高く、心臓病のリスクを下げるともいわれています。昔は壊血病を防ぐために欠かせない食材として重宝されていました。
 
通常は煮込みで食べることが多いですが、脂肪部分は生で醤油などをつけて食べます。私たちが鶏肉を食べるくらい頻繁に食される肉の一つです。
 
また、皮は衣類に、骨は伝統工芸品や道具に用いられ、全てのパーツが無駄なく使われており、私たちが見習わなければならないサステイナブルな営為です。

主にアザラシの皮で作られるグリーンランドの民族衣装


アザラシ猟に同行 氷河崩壊を目の当たりに

ジョンさんは毎朝、海の様子をチェックし、凪いだ日には仕事の合間を縫って、アザラシ猟へ出かけます。ある日、私も同行させてもらいました。

ジョンさんとアザラシ猟に向かう

小型のボートでポイントまで移動し、アザラシが海面に黒い顔を出すまで根気強く待ちます。遠くの陸地に山の連なりが見え、周囲は氷河に囲まれた幻想的な世界です。

氷河の上からアザラシを狙う

「数年前まではもっとたくさん氷河があったんだ」
ジョンさんは年々減っていく氷河の様子を話してくれました。
 
実際、グリーンランドの氷の融解は毎年加速しており、2021年の夏には、1日に約80トンもの氷が溶けたと報告されました。この量は例年の2倍以上だといわれています。
 
グリーンランドの氷河はその白さに特徴があり、太陽光の反射板のような役割を果たしています。
しかし近年、黒ずんだ色の氷河が急増しています。これは氷河に繁殖した藻や微生物で、黒という色が光の吸収を加速させ、氷の融解が速まっているのです。

藻や微生物で黒ずんだ氷河

また巨大な氷河が突然崩壊したり、永久凍土で地盤が固められていた土砂の山が崩れ、沿岸部の小さな集落が津波に飲み込まれるという出来事がたびたび起きています。
 
アザラシ猟へ出かけ、氷河の上で獲物を探しているとき、突然その氷河の一部が崩れはじめたことがありました。厚めの氷だと安心していただけに、予測不可能な氷河の崩壊にゾッとしました。

自然の資源を頼りに生きているグリーンランドの人びとにとって、刻々と変化する環境は、想像できない不安であると同時に、自分たちの力だけでは解決できない、もどかしい問題でもあります。
 
私たち日本人にとっては、一生関わることのない人たちの暮らしかもしれませんが、同じ地球という場所に生きる人間として、協力し合うことは、巡り巡って自分たちに還ってくることだと私は信じています。
 
電気をこまめに消すことや、水の無駄遣いを減らすこと、食品ロスを減らすこと、サステイナブル意識の高い企業の製品を使用することなど、私が身近にできることもたくさんあります。
一つだけでも生活習慣の中に取り入れることは、大きな一歩かもしれません。

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