【第2回】「ちょろちょろしか出ない」からの挑戦─3L/分の水量を実現した裏側

高除去×大流量の両立は可能か?蛇口一体型浄水器の常識を変えた開発ストーリー

浄水器選びでよく耳にするのが「水の出が弱くなった」「料理や洗い物に時間がかかる」といった声。
特に高除去性能タイプのカートリッジでは、除去力と引き換えに“ちょろちょろ”としか水が出ないことが長年の課題でした。

今回は、そんな壁を打ち破った「3.0L/分の高流量カートリッジ」の開発秘話に迫ります。
開発に携わった研究所の小野さん、松尾さんと、マーケティング部の福井さんによる対談形式でお届けします。

1|「2.0L/分では足りない」ユーザーの切実な声

福井 前回お話を伺った「高除去性能タイプ」の開発秘話について、私自身すごく感動したんですが、当時のお客様から「水がちょろちょろしか出ない…」というお声もありましたよね?
除去性能を上げると、水の出が悪くなるという話もよく聞きますよね。

小野 その通りです。除去物質を増やすには活性炭を増やす必要があり、当然その分、流量は制限されます。
最初は2.0L/分で販売しましたが、「ちょろちょろしか出ない」といった声もありました。

松尾 2.0L/分の流量って、生活水準的には十分な量なはずなのに、体感としては“弱い”と捉えられるんです。
特にお鍋に水を溜めたり、洗い物のときにストレスを感じる方が多くて。

小野 標準タイプから高除去性能タイプに切り替えたお客様の約4割から「流量が物足りない」との声がありました。その反響は予想以上でしたね。

2|流量の壁と、2Lから3Lへの進化

松尾 初めてタカギが、業界初となる蛇口一体型浄水器の高除去性能タイプを発売したのが、2012年でした。
その時のお客様からの反響が多くて、お客様の4割が標準タイプから高除去に移行されたこともあり、流量の改善は急務でした。
そこで私たちは、“高除去性能×高流量”の両立をめざし、3.0L/分を実現する開発に着手したのです。

小野 カギは活性炭の粒子径のコントロールですね。小さすぎれば水が通らず、大きすぎればクロロホルムなどの吸着性能が低くなる。
このトレードオフを解決するため、粒子径分布を最適化する実験を何十パターンも繰り返しました。

3|活性炭の「粒の大きさ」が生んだ突破口

福井 開発当時、技術的には何が最大の課題だったんでしょうか?

小野 最大の難所は、“高除去性能”と“高流量”という相反する条件の両立です。活性炭を多く使えば除去力は上がるけれど、そのぶん水が通りにくくなる。

松尾 活性炭の粒子が小さすぎると水が通らないし、大きすぎると除去できない。そこで私たちは、粒子径の最適化、いわゆる“粒度制御”に着手しました。

小野 粒子を最適な大きさで、より均一な分布にすることで、除去性能も水通りも両立させる。そのバランスを取るのが本当に難しかったです。
この吸着性能に優れた浄水器用カートリッジ技術は、特許第6101195号として、現在の開発にも活かされています。

▼2022年 文部科学大臣賞を受賞

4|「3.0L/分」実現までの実験と失敗の繰り返し

福井 実現までには、かなりの試作とテストがあったんでしょうね。

小野 ええ。3.0L/分を目標に、何十パターンもの試作を繰り返しました。

松尾 一度、ベストな流量が出た“チャンピオンデータ”を得たのに、量産時には再現できなくて……。活性炭の種類を変えるなど、部品の再設計にまで踏み切りました。

※いろんな条件で試作して最も性能が高かった条件の実験結果をチャンピオンデータと呼んでいます。


5|他社にない、技術と構造の差別化ポイント

福井 最終的にタカギの高除去カートリッジは、他社とどう違う点で勝負してきたのですか?

小野 まずは、蛇口一体型浄水器で“16+1物質除去+3.0L/分”という高除去、高流量のスペックを初めて実現したこと。
これは今でも他社ではなかなか真似できません。

松尾 また近年は、デザイン性の高い蛇口一体型浄水器も人気ですので、蛇口の形状に影響されない浄水カートリッジの高除去性能技術にもこだわりがあります。
デザイン性の高く、人気の蛇口は湾曲しているので、活性炭を“曲がった形状の浄水カートリッジは業界唯一です。

福井 確かに!!デザイン性の高い蛇口一体型浄水器は、カートリッジの形状に影響されますよね。
曲がった形状の浄水カートリッジは、タカギの大きな強みですよね。ユーザー体験を高める“使い心地”へのこだわりを感じます!

福井 実際、お客様からの感想で印象的だったものはありますか?

小野 「水を出した瞬間の勢いが違う」「料理や掃除がストレスフリーになった」という声が印象に残っています。

松尾 ある高齢のお客様から、「昔はちょろちょろ水で不便でしたけど、今は台所に立つのが楽しい」と言っていただいたときは嬉しかったですね。

福井 お客様の暮らしを直接よくする─それが技術開発の原点ですよね。

6|mini Neoに込めたマーケティングの想い

福井 ちなみに、私たちマーケティング部では、今年6月からネットストアで、蛇口直結型浄水器「mini Neo」の販売を始めたんです
賃貸住宅などで工事ができない方にも、安心できる水を届けたいと思って企画しました。


小野 はい、聞いていました。mini Neoの特徴って、工事なしで取り付けられて、しかもコンパクトで使いやすいところですよね。

福井 そうなんです。しかも今回、最初から“高除去性能カートリッジ”を付属しています。
理由はシンプルで、「まずはタカギの技術力を体感してほしい」から。違いを実感してもらえば、きっとリピートに繋がるはずだと考えました。

松尾 それはうれしいですね。mini Neoに標準搭載されていることで、より多くの方が高除去性能フィルターの“安心感”を実感できるのは大きいです。

福井 はい。単に売るのではなく、「安心を届けたい」というタカギの想いが詰まった商品だと思っています。

7|まとめ

“ちょろちょろ水”からの脱却─

それは単なる機能の改善ではなく、ユーザーの生活ストレスを減らすための技術革新でした。
高除去×高流量という難題をクリアしたタカギのカートリッジは、「使ってよかった」と実感してもらえる商品へと進化し続けています。

次回は、「にごり」など目に見える除去対象物質への挑戦と、それを可能にした最新技術についてお届けします。


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