みなさまから寄せられた“「食育」に関するお悩み”を解決する連載が始まります。お答えいただくのは、現役の小児科医であり4児の母としてYouTubeで情報を発信する「女医の日常」さん。
日々の健康はもちろん、一生に関わる食だからこそ、真剣に悩む声がたくさん寄せられました。どの年代でも多かったお悩みが「子どもの好き嫌い」。何でも食べてくれるように親が向き合うべき? それとも強制しないほうがいい? などと、心揺れ動く方も多く……。
現役小児科医としての知識から、家庭で実践しているエッセンスまで。幅広い視点をもつ「女医の日常」さんにお聞きします!
子どもの好き嫌いとの向き合い方
子どもの“食べたい欲”をかき立て、好きな食材も、嫌いな食材もお皿に盛り付けます
好き嫌いしないでほしいという気持ちはよくわかります。でも、何かしら食べられて、成長曲線に沿っていたらあまり心配しすぎなくても大丈夫。わが家の子どもたちや外来のお子さんを見ていると、1〜2歳は“見慣れないものへの抵抗感”が食べない原因に多いです。歯が生えそろう3〜4歳になると、いろいろな食材と出会うことで、少しずつ食べられるものが増えてきますよ。
とくに離乳食は、大人とは準備が別だったり「食べさせなければ」という気持ちもあったりして、子どもが孤食になりがち。私も長男の育児中はそうでした。子どもは一人での食事がつまらなくて食べない可能性もあるので、家族で一緒に食卓を囲んだり、親がおいしそうに食べているところを見せたりして、子どもの“食べたい欲”をかき立てるのもおすすめ。
わが家では、好きな食材も嫌いな食材も個々のお皿に盛り付けます。量が多いとプレッシャーになるので、少しだけ。食べるかどうかは子ども次第です。そして「(苦手なものでも)ひと口は食べてみようか」と伝えて見守ります。残しても叱らず、ちょっとでも食べられたらたっぷり褒める!
せっかく作った食事を残されると、「辛い」「いやだ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。わが家では、残したものは家族の誰かがパクッとおいしく食べちゃう。それを見続けているからか、長男は好き嫌いがほとんどなくなり、次男も苦手なピーマンやナスも頑張って食べたりして、今ではみんないろいろ食べられるようになりましたよ。
Question 1
2歳は自我が出てくる頃なので、食べるより遊びたいのかな?あるいは、まだ“食べる必要性”がわかっていないのかもしれません。言葉で「大事」と言っても2歳には伝わりにくいので、食にまつわる絵本を読んでみるのもおすすめです。私や夫も子どもたちに読み聞かせていますよ。
わが家の長男も、食べるより本を読みたいタイプ。とくに幼児期は食べず、苦労しました。本人が食べたがらないのであれば放っておき、他の家族で「いただきます」をしてみるのも手。強要はせず、本人の意思で食卓に来させていました。
また、もしかしたら食に興味がないのではなく、お腹が空いていない可能性も。
そもそも小さな子どもは、一度に食べられる量が少ないので、朝食・午前おやつ・昼食・午後おやつ・夕食と、小分けにして摂る必要があります。間食を摂りすぎたり、食事以外の時間にダラダラ食べたりしていないかもチェックしてみましょう。これらがないようなら、そもそもお腹が空かないのかも。副交感神経の影響から、空腹や満腹を感じにくいお子さんもいます。わが家の長男も空腹を感じにくいタイプです。なるべく食事の時間を決めて、「ごはんだから座ろうね」を実践していくと、リズムが整い改善するかもしれません。
食に興味がないことは心配だと思いますが、お子さんが毎日元気にすごして、おしっこもうんちも出ているのなら大丈夫。2歳だから食器を使わなきゃとか、考えすぎなくてもいいです。手づかみ食べでも、まずは食べられたらいっぱい褒めてあげてください。親の取り皿から食事をわけてあげるのもおすすめ。「大人のものを食べている」と、子どもはいい気分になるみたいですよ。
中高生の場合は、小さな頃の家庭環境が影響している可能性もあります。バランスよく食べる大切さを、改めてきちんと伝えてみてはいかがでしょうか。
というのも、思春期は、ホルモンが一気に増えることで体に大きな変化が起きる大切な時期です。思春期初めに身長がぐんと伸び、体つきも大人に近づいていく。特に骨は思春期に最大の成長期を迎え、最も骨密度が増える時期です。この頃の生活習慣が将来の骨の健康を左右するといっても過言ではありません。
中高生までの栄養の摂り方はとても大切で、骨粗鬆症にも影響する可能性があります。骨密度を上げる食事は、20歳すぎから意識してもだめ。中高生は思春期でダイエットをするお子さんもいますが、無理な食事制限は栄養不足で骨がスカスカになってしまいます。
体育の授業や部活動などで体を動かす機会が多い学生時代に、1日3食しっかり食べることや、カルシウムや、タンパク質、ビタミンD、ビタミンKを含む食品を意識してとることが、骨の発達を支えるカギになります。
Question 2
歯が生えそろい、意思疎通もとれるようになってきた5歳は、そろそろ好き嫌いも減ってくる頃です。決まったものしか食べず、みじん切りの玉ネギも一つひとつ出してしまうとは……こだわりが強いのかな?
「柔らかいものがいや」なら、なぜいやなのか?5歳なら、本人に聞くとお話しできると思います。まずは気持ちを聞いてみてください。
あとは、一緒に作ってみるのはどうでしょう? 家庭菜園やお料理をしてみることで、食に興味を持って、食べるきっかけにつながるかもしれません。
少しでも食事が食べられて、身長と体重が成長曲線に沿っていたら心配しすぎないで。
ただ、あまりにも偏食がひどい場合は、栄養不足になっている可能性もあります。よくあるのが偏食で牛乳ばかり飲んで、マグネシウム値が下がっている場合など。 マグネシウムは神経の興奮を安定させる役割があるので、不足するとイライラしやすかったり、集中力が落ちてしまうことも。食欲低下など軽い消化器症状が出ることもあります。あとは、やはり貧血になってしまっている子も多くいます。 小学校入学が近づいても偏食がきつい場合は、かかりつけの小児科に相談して、採血で栄養状況をチェックしてもらうと安心です。栄養相談にものってもらえるはずですよ。
また、野菜や果物が苦手だったり小食のお子さんは、便秘になるお子さんも多いです。子どもの便秘のサインは排便回数が週に2回以下、排便時に痛みを訴える、ウサギのようなコロコロ便、など。こういったお子さんは便秘の治療をしてあげることで空腹を感じるようになり、食べたい気持ちにつながるかもしれません。小児科に相談することをおすすめします。
Question 3
このお悩みは多いです! ただ、給食で1日に一度はバランスよく食べられているのなら、おうちで頑張りすぎなくても大丈夫ですよ。でも、だからといって苦手なものをおうちで全く出さないのでは、子どもの好き嫌いはなくなりません。食育のためにも、食べられても食べられなくても食卓に出すようにして、徐々に見慣れて「食べてみようかな」につながればいいなと思います。
また、好き嫌いに限らず、朝はあまり食べられないお子さんは多いです。朝食は、小さなおにぎりでもバナナでも、何かしらか食べられていればOK。菓子パンなど、白いお砂糖たっぷりのものは血糖値が上がりすぎるのでなるべく避けられれば良いなと思います。
お昼は給食に任せて、夜はその日の状況でいい。毎食ではなく、1日単位、1週間単位でバランスを取ってみましょう。
それから、保育園や学校は1日のリズムが整っていることも“食べられる”に繋がっているのかも。おうちでも食事の時間はなるべく毎日同じにしてあげましょう。食事の時間にアラームを設定しておくのも良いかも。
そして、食事のときはおもちゃや絵本を片付けて、テレビを消すのもおすすめ。とくに小学校に入学する前のお子さんは“ながら作業”はできないので、テレビがついているのに「テレビを観ずに食べなさい」は難しいんです。テレビがついていないと最初はシーンとして違和感があるかもしれませんが、少しずつ慣れますし、会話も弾みますよ。
あとは、小さなお子さんなら、食べる椅子もチェック。足がブラブラしていませんか?足をついてふんばることは、噛むことにも影響します。足台を置いたり、子ども用の高さが調整できる椅子を活用したりするといいですよ。わが家では『ストッケ』を愛用しています。
小学生になっても偏食が定着していると、大人になっても野菜嫌いだったり外食が多いというデータもあります。乳幼児期を脱したら、偏食は注意が必要です。とくに外食は、脂質や塩分も多いので、そればかりでは体に負担がかかります。かかりつけ医に相談したり、3歳児健診や5歳児健診で栄養相談をするのも手です。
たくさんのお子さんを見てきた「女医の日常」さんの言葉から、まずは“毎日元気に過ごしていることが大切”、“食卓は、みんなで楽しく、おいしく囲む”という、ともすると忘れがちな本質が見えてきました。お子さんの気分や体調もあるでしょうから、パッと効果は出ないかもしれません。でも、そんなときも焦らずに、少しずつ。できる範囲で、お子さんの食体験を増やしていきましょう。
教えてくれた人
女医の日常さん
小児科クリニックに勤務する小児科医でありながら、小学2年生の長男、5歳の次男、2歳の双子と4児の母。登録者数約14万人のYouTubeチャンネル『女医の日常』で、ルーティン、料理、購入品など、日常や子育てに役立つ情報を発信している。初となる著書『毎日パパっと、からだよろこぶ 女医の日常ごはん』(ワン・パブリッシング)を2025年10月に発売。
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